Billy Klüver Interview with David Tudor
日付:
1978年11月28日
内容:
デーヴィッド・チュードアとのインタヴュー
資料保管場所:
#Klüver/Martin_Archive
#Getty_Research_Institute
資料制作者:
#デーヴィッド・チュードア
#ビリー・クルーヴァー
翻訳:
ビリー・クルーヴァー(BK):島でやろうとしていることを手短に説明してください。どういうかたちの作品になるのでしょうか。
デーヴィッド・チュードア(DT):この作品によって島の様々な自然の特徴に想いを巡らせ、それらを際立たせたかたちで提示したいんです。例えば、ぼくがやろうと思っているのは、ある特定の環境的状況に自然に住んでいる音を取り上げて、別の環境的状況に置くことです。そうすることで、その別の環境によって、同じ音でありながら経験する仕方が少し変形される。そうすれば、その音を忘れなくなります。それはあなたとともにさまざまなかたちで生きることになる。ぼくにとってそれは自分が見つけたものを大事にして、他の人と分かち合うことなんです。
BK:作品の構造はなんでしょうか。簡単に説明してもらえますか。
DT:構造は自分が異なる空間の性質を観察することですね。つまりぼくにとってそれらの空間自体が構造であるということです。そしてこれらの空間を、自分が発見した音の特性によって活性化するのです。
BK:それはどうやって達成されるのでしょうか。
DT:パラボリック・リフレクターを使って、人がそのなかを通れるとても強いサウンド・ビームの通路を作ります。これらのビームは非常に凝縮された音源であり、そのビームから離れると音の強度はかなり弱まります。他のところでは音は飛び散るかもしれませんが、それでもつぎの瞬間には、まだとても凝縮された音に出会えるでしょう。それからリフレクターを、石のような自然の反射面に向けたりもします。これはビームを作ることと同じような考えですが、それとは異なる特徴を得ることもできます。たとえば石は音を逸らし、それを別の方向に向かわせることで、別の自然の場面をその音で覆うことができます。
まっすぐなビームの場合、二つのパラボラが向かい合っていますが、これらはどちらも送信用のパラボラなので、リフレクターの中間で二つのビームが一つになります。そのおかげでビームに強い視準(collimation)が与えられるわけです。リフレクションの場合には、パラボラを一つだけ使います。
他にもいくつかのヴァリエーションが可能です。一つは二つのビームを交差させること、あるいは二つのリフレクションを交差させること、またはビームとリフレクションを交差させることもできます。どういう音源を使うかによってもヴァリエーションを作れます。たとえば、交差するビームがある場合、両方のビームに同じ音を入れることも違う音を入れることもできるわけです。そういうことはすべて、環境に対する私自身のエステティック的な応答の一部です。二つの音を異なる強度で一つのビームにミックスすることもできるし、そのことで300フィート離れた別の音のリフレクションを作り出せるかもしれません。でもこうした細かい操作をどう洗練させていくか、すべて島自体が教えてくれるでしょう。
BK:《Island Eye Island Ear》を制作しているとき、何を気にしていましたか。
DT:島という場所の絶対的なユニークさを経験することの喜びを他の人にも知ってほしいんです。島にいるときは、そこに人が何人いようとも、遠く離れている感じがいつもありますが、そのことでそこにあるすべてのものをとても注意深く見ることを促されます。それは他の場所に行ける感じがするときは起こらないことです。
BK:なぜ自然のなかで作品を作りたいんですか。
DT:それはぼくの存在の一部なんです。それから距離をとることができないので、今のは答えることのできない質問ですね。ぼくの作品はすべて自然と強い結びつきを持っていると思います。
BK:使う音はどのように選ぶのですか。
DT:その場にすでに存在する音のほとんどは、集めるのが難しい音です。まず、それを録音することが難しい。なぜならそれらの音の性質はそれらが存在する空間自体から与えられたもので、その空間を必要とするからです(なぜなら音は空間の中でだけ生きていて、それ以外の場では生きていないからです)。だから、そこに存在する音を、その音から自分が引き出せる性質を検討しながら、選び出します。たとえば、風の音だとすれば…風はいつも風のように聞こえますね…でもその音を電子的に変形することによって、風の音をあたかも別の空間にいるかのように仕立て上げることを目指します。別の言い方をすれば、自分でそれを聞いているときには気づかない特別な性質をまずは露わにするため、これらの音にエレクトロニクスによる加工をたくさん施すということです。でもそれらの音を別の空間に移行させて聞いても、同じ音を聞いていることはすぐにわかるでしょう。そのことからは逃れられない。そうでなければ、音を観察によって選び出す、と答えることもできます。なぜなら外部から何も持ち込みたくないからです。
BK:観客にどのような性質の経験を与えたいのですか。
DT:まずもって親密さ(intimacy)です。ある特定の空間において調整を施した特性に出くわしたとき、たった一人きりでそれと出会っている感じがするようにしたいんです。周りに人がいてもいなくても関係はありません。それは画家たちがとても容易に作り出せる感じと同じようなものですが、音の場合、それはけっこう難しいことなんです。それは人々の想像を刺激することですね。
BK:このコンサートは観客にどう作用するんでしょうか。
DT:よくわかりません。もしかするとおとぎの国(wonderland)にいるような感じがするかもしれませんね。
BK:自然環境に技術システムを導入したい理由はなんですか。
DT:私はすでにそこに存在するものを増強するようなやり方で技術的な媒体を使っていると思います。たとえば、パラボリック・リフレクターの何が不自然(unnatural)なのかぼくにはわかりません。それはすでに自然に存在するものですから。もしかすると完全なかたちでは存在しないかもしれませんが、ぼくも別に完全なかたちを追い求めているわけではないですし。
BK:ボルダー島のどこが魅力的なんでしょうか。
DT:そうですね、一つにはこの島が見渡すことのできないかたち(un-scannable shape)をもっていることがあります。それがとても興味深いんです。つまり見覚えのある、前に見たことがあるものに出くわすのだけれど、異なる角度からたどり着くため、そこに向かっていることに気づかないということがあるんです。その意味で、ボルダー島では驚かされる状況が生じるわけですね。それは他の島ではあまり感じたことがありません。というか、別の意味では感じたのですが。なかには隠れた特徴を持つ島もあって…つまりそれは本当に視野から隠されていて、たまたまか、あらかじめ仕組まれないかぎり出くわさないのですが、いずれにせよそこにたどりつくまでは見えないんです。ボルダー島は内部が迷宮のようです。あとは異なる標高それぞれの性質がとても興味深かった。本当にさまざまな坂道があるのです。そこが珍しいと思った。標高が変わるに従って輪郭線も変わり、それが次の輪郭線にどれだけ近接しているかということが面白かった。
BK:島でなにか隠れた特徴を見つけましたか。
DT:少しばかり見つけましたが、期待していたほどではなかったですね。でもそれも島に備 わっている神秘的な性格によって補われていると思います。特にサウンド・ビームはそれ自体が空間を定義し、すでにそこにある空間と一義的に対応しているわけではないのですから。それは独自の空間を持つのです。だから、島はとても豊かな空間的特性を持つことになります。
BK:コンサートはどのように記録するのですか。
DT:空中から録音することはできないかずっと考えていました。空から音を録るんですね。あと固定したポジションから録音し、それを水の中を通してみるとか。まあ、いろいろと楽しんでいるわけですね。そうでなければ、なんらかの動かせる記録媒体が必要になると思います。わからないけど、多分そのためにはヴィデオが一番いいでしょう。カメラをステレオ・マイクにマウントして、マイクがカメラと共に動くようにしたり。でも環境の特徴を反響体(resonator)として使いながら録音し、それらの反響体がそこにある音を色付けることができないかということにも興味があります。
BK:それはレコードのように単一の録音として考えているのですか。
DT:それも可能だと思っています。録音の限界とは時間の長さです。とても目立つ特徴がいくつかあるので、そのような音は短い録音時間に適していることはわかっています。でも同時に長い時間の録音をすることも可能だと思います。そして興味深い三つ目の可能性として、ものすごく長い時間の録音を作って、時間圧縮の技術を用いることが考えられます。例えば7日間に渡って、毎日同じ時間帯に四時間ずつ録音し、それからそれを四時間の録音に圧縮すれば、時間の流れと共に音が変わっていくことのリアルな印象を与えるでしょう。
BK:美しいものになりそうですか。
DT:ぼく自身、ぜったいに見逃したくないですね。このプロジェクトについてはずっとそう感じています。実際の島ではじめて色々と試した時から、それは明らかでした。実に見事なものだと思ったんです。つまり音を聞いたり、霧を見たりしたときの経験が本当に美しかったので、これをやらないでおくことはできないと思ったんです。もし実現できなかったら、ぼくのアストラル体には穴が空いたままになってしまうでしょう。ああ、本当にとても美しいんです。霧が形作られては消え、絶えずまた形作られていくのをただ見ているだけで。そして毎回それは別の場所に現れ、もし奥の方に深く行くことができれば、そのように深く行くんです。そして突如として蒸発し、また始まり、こっちのほうに行き、深く進むと思えば今度はあっちに行ったりして。そしてぼくは音も同じことをしていると思うんです、そう聞こえるので。風が吹いているときにサウンド・ビームのところに立つだけでいいんです。そうすると絶えず周波数スペクトルが変わっていることがわかります。そして何の音源を入れるかによって、音にもたらされる変化が微細なものなのか、あるいは激しいものなのかを調整できるんです。
(訳:中井悠)
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